平成23年・24年SMI雑感アーカイブス


平成24年SMI雑感
12月 「日本の会社主義に期待」ドラッカー
11月 「思考停止の日本人」 ビートたけ
10月 「知ることより考えること」池田晶子
9月 「監督にほめられたくて・・・
8月 金メダルの契約書
7月 準備力
6月 『諸行無常』
5月 『善行切符
4月 『ロールモデルを持つ』
3月「日本一になる監督は・・・」
2月「石も生きている
1月決心すると『昇竜』が動き出す


平成23年SMI雑感
12月 『天明先生』の講演
11月 『4分の壁』という制限
10月 「上手な断り方」で自尊心を育む
9月 「私は失敗したことはない」
8月 この秋は雨か嵐か知らねども・・・
7月 練習はキャプテンの胴上げから!
6月 日本人の幸福度
5月 ネガティブ・ケイパビリティー
4月 最後は勇気
3月 「お金が空から降ってくる」

2月 パーソナル・ミッションスティトメント
1月 笑いと感動でスイッチON!



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《24年12月》

日本の「会社主義」に期待した ドラッカー

 第9期SMIビジネス塾が12月13日に終了した。今期はドラッカーとSMIイズムという事で一年間学んできた。

 私はドラッカーを組織のマネジメントを考えた経済学者か経営学者と思っていたが、そうではなかった。1930年代の大恐慌やヒットラーのファシズムを経験し、国や社会においての組織の在り方を研究し、提唱し続けた思想家であり、哲学者だった。

 ドラッカーはこれからの世界を考える上で、日本の『会社主義』に期待していたと言われる。
「日本の50年におよぶ経済の成功をもたらしたものは社会的制度・政策・慣行だった。その典型が系列であり、終身雇用、輸出戦略、官民協調だった」と言っていた。それは、人間中心の企業組織を作り、そうした組織が社会を形づくっていき、ひいては、それが国家の礎となっていく。そうした考えをしていたようだ。

「経済的な自由によって平等を実現できなかったその結果、ブルジョア資本主義はそのもたらした物質的恩恵にもかかわらず、プロレタリアだけでなく、経済的・社会的に大きな恩恵を受けたはずの中流階級の間でさえ、社会制度としての信用を失った」
 また「(経済市場主義の結果)一人ひとり人間は、その意味を受け入れる事も、自らの存在との結びつきを確認することもできない巨大な機構や組織の中で孤立し埋没してしまった。その結果社会は、共通の目的に結びつけられたコミュニティーではなくなり、目的のない孤立した人間からなる、混沌とした群衆となってしまった」と言い、そしてドラッカーは、経済のため生き、経済のため死ぬという経済至上主義からの脱却を唱えていた。 

 では我々は、そうした経済至上主義の混迷、混沌の時代にあって、どう考え、生きていったら良いのだろうか。私はその答えは、このコーナーで何度か紹介しているSMIユーザーで、宮城大学元教授天明茂先生の「志企業」の特長にこそ、解決する方法があり、目指すべき道があると考えています。

 その中のいくつかを紹介すると
 @社会の不条理を解決したいという強い志に支えられている。
 A経済的価値以外の価値を重視している。
 B志や価値観に共鳴してくれる人をお客様にしている。
 C地球環境保全を事業に取り入れている。
 D会社の適正規模をわきまえている。
 E地域に根ざしている。
 F経営者が「出会い」を大切にし、謙虚に学び続けている。
 G宇宙や自然の原理原則に従っている。
 H一人ひとりが人格的に成長する組織文化を目指している。
 Iこの世に生を受けた使命を深く自覚している
。       
  と、いうものだ。
 
 そうした指摘や、示唆にふれ。それらをSMI的に考えてみると、SMIの最終テーマは、人生6分野による全人格(トータル・パースン)を目指すこととなる。正に企業も「うちだけ良ければ」等といった、小さな、狭い、考えでは短期的には継続できても、長期的には必ず淘汰される時代だ。地球規模に自社と自然の関係を考え、孫やひ孫の時代を捉えた、100年先、200年先を見据えた企業、つまり法人としての人格、法人格としてのトータル・パースン(全人格)を目指すべき時代に入ったと言えるのではないか、と私は感じている。(2012/12/20)


《24年11月》

「思考停止の日本人」 ビートたけし


 先回に続いて、現代人の問題「時代の変化の速さと、あふれる情報の中で、人が考えなくなってしまった」ということについて考えてみたい。

 ビートたけしの本がよく売れている。ビートたけしの本は“自分は物事を深く考えていなかったな”と気づくのに役立つ。そうした本が売れるということは、自分で考えようという人が増えているとも言える。権力を集中させておきたいという為政者にとっては、困ることだろうが。

 『今の(日本)はそういう(知覚する)文化が無くなったので、「(面倒な事は)言わないこと」と「考えない事」が同義になってしまった。かくして(日本人は)面倒な事は全て思考停止状態にして、自分で考える事を止めてしまった。核の問題(原発の問題)等も、問題の本質はそういうところにこそある。』と、〈たけし〉は言う。正に我が意を得たりだ。

 このところ、新人の人材育成という事で、いろいろ考えさせられた。ある会社で遅刻してきた新人に「どうして遅れたんだ?」と聞いたら「お母さんが寝坊してしまい朝ご飯と弁当が出来ていなかったので・・・」と答えた。「で、お前はいつ起きた?」と聞いたら「私は起きていました」と答えたという。まるで笑い話だ。しかし、こんな話は、あちらこちらで聞く。確かに個人差はあるにしても、そうした若者が確実に増えている。「子供は社会を映し出す」とか「子は親の鏡」等と言われるように、子供は社会の縮図と言える。

 先日、NHKを見ていたら、『私語禁止』という看板のある公園が全国で増えてきているという。『私語禁止』の公園で子供達はどう遊ぶのだろうか。当然、遊ぶことは無理だ。そうした、子供に、子育てに不寛容な社会で、子供が健全に育つはずがない。クレームをつけた人や、そうすることをそのまま決めた行政の人間も、全く考えることを怠っている。正に〈たけし〉の言葉を借りると、完全に思考が停止している。

  ドイツのエーリッヒ・フロムという思想家は「現代文明の欠陥は、人々が、
各々の自己関心に心を奪われすぎているという事実にあるのではなく、逆に人々が、各々の真の自己の関心に十分に心を配らなくなった事実にあるのである。また人があまりに利己的であるということではなく、人が自らを、真に愛せなくなったことにこそある」と言った。自分を愛せないということは、人を愛せない人が増えているということだ。子供や、青年はその犠牲者と言えるのかもしれない。半世紀前の言葉だが現代人が真剣に考えなければいけない言葉だ。 

 そうした意味でも、SMIイズムの重要性を考えさせられる。SMIの新社会人用プログラム(DYFプログラム)は、仕事に向かう基本的姿勢として、パーソナル・ミッションステートメントを書くことを要求する。あなたの働く価値観は?、あなたの人間関係の価値観は?あなたの余暇に対する価値観は?etc、というように価値観の明確化をする。当初は当然ほとんどの人が書けない。しかし、一所懸命に『何度も、何度も、考える』ことで少しずつ変化してくる。

 SMIの行動計画は、人を頼っては一歩も前へ進まない。考えて、考えて、考え抜くことを要求するプログラムなのだ。その時人は必ず倫理的、道徳的な結論に行き着く。多くの人を観させて頂き、私はこう断言できる。「人は自分で深く考えようとしない時に不善をなし。考えて、考えて、考え抜いた時には善をなすものだ」と。
(12.11.8)


《24年10月》

「知ることより考えること」 池田晶子

 私は今、池田晶子という5年前に47歳の若さで亡くなった、哲学者(自称文筆家)の本をよく読んでいる。唯認論者なのかと思って読み始めたのだが違った。ただ彼女の指摘していることが現実によく起きているので驚いている。

 また池田は、近代の日本人で一番物事の本質を深く考えた人として“小林秀雄”を敬愛していた。「小林秀雄の書いた物、言ったことは有無を言わず受け入れる」と書いていた。その影響で、私も小林秀雄を久しぶりに読むようになった。難解な文もあるが昔は全く入ってこなかったものが、SMIを少し理解できてきた今は、心にストンと落ちてくる感じがしている。二人は「知ることより、考えることだ」と言い続けている。私も反省し「考えろ、考えろ、もっと考えろ」と自分に言い聞かせている。

 50年以上前に、フランスの思想家であり、医学者であったシュバイツアーが、記者のインタビューで「現代の問題は何でしょうか」と問われ、「(文明と情報の多さの中で)現代人の一番の問題は考えることをしなくなったことです」と答えたと言われる。

 SMIプログラムもそのことを指摘する。DPM・レッスン12「ビジュアリゼーションの真髄」に「世の中は急激なペースで変化しているので、とかく人々は漠然とした一般論で物事を考えるようになりがちです。読んだり聞いたりしたことに、さまざまな感想は持ちますが、一つのことを大雑把に理解すると、すぐに次のことに移っていきます。このようにしていると、物事を個々の問題ごとに考えるのでなく、一般論として考える習慣が身に付いてきます」とある。この指摘の通り、結局多くの現代人は洪水のような情報の中で、事に対して感想は持つが、自分の考えを持つことなく一般論の反応をするだけで生きている。

 池田晶子も「現代の子供は画一的な教育の中で。もう頭の中が機械のようになっている。自分で考えるという、そいいう回路がなくなっている。-------ゼロ歳児教育というものが始まっているそうだ。東大に向けてゼロ歳児から始めるというわけであるから、全部が(試験に合格するための)テクニックになってしまう。反射しているだけだから、自分で考えるということを、子供達は理解できなくなってくる。」という。

 いま起きている日中問題や原発の問題(※原発は昨年の福島第一原発の事故で、私も自分の問題として考えるようになった。それまでは一般論しか持っていなかった)も、一人ひとりが自分で考えるということをやったなら、もっと違ったものになっていくと思う。しかし、ほとんどの人が深く考えずに、識者と言われる人達が言ったこと、つまり一般論を自分の考えと思いこみ、興奮し、怒るか、ただ従順に従うかになっている。

 SMIはそうしたことに陥らない為にもパーソナルモティベーションで生きることを説く。そのためには、自身の価値観を明確にし、目標をビジュアライズして生きていくことがカギとなる。そうした、自分で考え、自分で決断し、自分で行動し、その結果に対して自分で責任を取る、というパーソナルモティベーションを開発していったなら「考えることを人に委ね、考えずに生きる」といった生き方をする余地などなくなる。正に考えて、考えて、考え抜かなければ真のセルフ・モティベーションは、決して起きてこないのだ。

 今、池田晶子、小林秀雄に触れるたびに、その思いを強くする。そうした観点からも、SMIイズムで生きようとすることが、時代の閉塞感を打破するカギとなると確信している。 (12.10.8)


《24年9月》


「監督にほめられたくて・・・」

 
モティベーションという言葉はモーティブ(Motive 動機)とアクション(Action 行動)が合わさった言葉で「モティベーション=訳あり行動」となる。つまり人間の行動には必ず理由があるということだ。

 先月のこのコーナーで書いたが、オリンピックのメダリストの多くが、単にメダルを取るということだけでなく、他に多くのメダルを取る理由(目的)を持っているものだ。シドニーオリンピックの女子マラソン金メダリスト高橋尚子は「小出監督に『Qちゃんよく頑張ったね』と言われたくて一生懸命走りました」と言っていた。ロンドンオリンピック団体メドレーで銀メダルを取った、北島以外の3人の選手は「康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかない」が強いモティベーションとなった。

 過日(9月13日)のSMIビジネス塾でボルト製造会社のW経営者が、仕事に目的(働く理由・使命)を持たせることのすばらしさを語っておられた。
 一般の社員が、時間あたり100ケ作れるものを半分の50ケしか作れない女性がいた。そこでW氏が、そのボルトがどこで使われ役立てられているかを写真にして見せ、伝えた。「このボルト(※ソフトバンクの鉄塔に使われ、安全に関わる重要なネジ)は、こんな風に使われ、社会に役立っているんだよ。あなたの仕事は素晴らしい仕事なんですよ」と。その後の女性の仕事ぶりは見違えるほど変わった。時間あたり50ケほどだったものが80ケまでできるようになったという。

 SMIのAEP(人を勇気づけるプログラム)に、

例えば人々は組織において、次のような理由で、責任を果たします。
  ・自分の才能や能力を発揮する 
  ・お金を稼ぐ 
  ・独創的な仕事をする 
  ・地位を獲得する
  ・他の人との関わり 
  ・自分自身の管理
  ・昇進する
  ・達成の満足感 
  ・他の人の役に立つ。

人が何故働くかを知っていると、リーダーはそのニーズや“理由”を満たすための最善の機会を与えることができるのです」


とある。

 多くの人が、上記の女性のように働く理由や目的を明確にしていない。しかし、人はその理由(目的)を持ったとき、何倍もの潜在能力を発揮してくる。我々SMIモティベーターも、SMI手帳(ESP)に、毎月仕事の使命を書き出す。私もそれを見ると、日々起きてくる多くの問題の中にあっても、モティベーションを維持することができていると感じている。 (12.9.20)


《24年8月》

金メダルの契約書

 ロンドンオリンピック閉幕した。日本は過去最多の38ケのメダルを獲得した。

 先日のモーニング・アカデミーでベテランの塾生Sさんが「ボクシングの松田選手と水泳の寺川選手の言葉に勇気づけられました。今回もSMIと同じ事を言っている選手が多かったですね」と言っていた。

 ボクシングの村田選手の「日本人には無理だと聞いたことはあったけれど、自分には無理だと聞いたことはなかった」「これがゴールだと思えれば涙も出てくると思うんですけど、取った瞬間にこれがゴールなのかスタートなのか見えなくなってしまった。これ(金メダル)が僕の価値ではないんです。これからの人生が僕の価値だと思うので、恥じないように生きていくだけです」というように、機知に富み、人生を考えさせてくれる、言葉があった。

 また「康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかない」銀メダリスト松田選手、「(日本)競泳(チーム)は8日間27人で1つのリレーをしているようなもの。最後の男子リレーの選手がタッチするまで27人の選手のリレーは終わらないです」銀メダリスト入江選手、「金メダルが欲しかったが、チーム全員でやり切った結果。悔いはない」沢選手「仲間がいなければ、ここまで来られなかった」宮間選手、というように、チーム力を鼓舞し、組織のパワーを引き出した言葉もあった。

 そして「終わりよければすべてよし、という言葉もある。日本の皆さんに頑張っている姿を見せて感動や勇気を与えられたと思う」内村航平選手「この銅メダルを被災された東北の方々にささげたい」。室伏広治選手「ここまで来るのに支えてくれた人や応援してもらった人の思いがたくさん詰まったメダルなので、重く感じます」(卓球女子団体銀・福原愛)というように、やっぱり日本人だなということを思い出させてくれ、少し愛国心をくすぐられる言葉もあった。

 それからあらためて驚かされることがメダリストのほとんどが「メダルの契約書」を書いているということだ。これは「成功者は書く人である」からすれば当然と言えば当然のことなのだが、そうした事実を見させられると、目標を書くことの大切さを納得させられた。
 村田選手は奥さんが冷蔵庫に張った「「オリンピックで金メダルを取りました。ありがとうございます」という過去形のアファーメーションがあった。 寺川選手は、いつも私は本当にメダルが取れるんだろうかという思いがあった、しかし平井コーチに言われ「わたしはロンドンオリンピックで金メダルを取った」というアファーメーションを書いてから精神的に強くなっていったという。

 そうした形で、メダリスト達は皆「メダルの契約書」を自分自身と結んでいたのだ。

 SMIプログラムも、目標を行動計画に書くことは、自分自身との契約を結ぶ事と言う。

 オリンピックの度に思うことなのだが、SMIが50年前より提唱し続けたことの確かさが、今回もあらためて証明された気がした。正に達成者(メダリスト)はSMIイズムの実践者だった。
 (12.8.20)


《平成24年7月》

準備力


 
いよいよロンドンオリンピックが始まる。また夏の甲子園も各地で代表校が決まり、今夏はスポーツの夏だ。

 岩手県の決勝は、盛岡大附属高校が、大リーグも注目するあの大谷投手を打ち崩して甲子園出場を決めた。

 大谷投手は高校生として初めて、160キロを記録した投手だ。岩手県内の多くの高校が、あの投手がいる限り、今年は甲子園は無理だという雰囲気だったようだ。しかし、SMIをチームで学んでいた、盛岡大附属高校は違っていた。「あの太谷君を打ち崩して、必ず今年甲子園に出場する」と決めていた。

 TVでも全国放映されたが、チームはピッチングマシンをピッチャーとキャッチャーの中間において剛速球に対応する練習を続けた。また心で負けないようにと、SMIを中心に、精神力の強化につとめた。そうした地道な準備と努力が、決勝戦でのホームランにつながった。

 先日、スポーツライターの二宮清純氏が、「金メダルを取る選手は準備をする人だ。強い選手は皆準備力を持っている」とシドニーオリンピックの女子マラソン金メダリスト、高橋尚子の例を挙げて言っていた。

 高橋尚子は35キロ付近でサングラスを投げ捨て、ラストスパートをした。その地点はアパートまで借りて、何度も、何度も、ラストスパートのイメージし、練習を重ねた場所だった。そしてそのサングラスは高橋尚子の父が拾った。

 10万人以上の観客の中で、実父が拾えたのは、高橋尚子のレース関係者が協議を重ね、周到な準備をしてきた結果だった。高橋尚子の金メダルは、そうしたチームの準備力によって獲得した金メダルだったと、二宮氏は断言していた。

 今回の盛岡大付属高校の勝利も、いろいろなマスコミの報道より、その準備力にあったのだなと感じた。

 また今回のオリンピックでも「私はこのメダルを取るために、多くの時間をその準備に費やしてきました。私がメダルを取るための準備は万全でした」といったコメントが多くメダリストから聞かれることだろう。

 SMIプログラムの『行動指針』は正にその準備力を高める最高のパートナーだ。私はこのパートナーを今日も使い、人生を、仕事を、準備していく。
(12.7.28)


《平成24年6月》

諸行無常


 私は今、新潟市の龍雲寺というお寺で、月二回の座禅会でお世話になっている。   

 先日、その座禅会での導師の指導は「諸行無常の響きあり」の『諸行無常』だった。 

 夜7時、広いお寺の座場は、かすかな光の中で静まりかえっていた。時に、町中にあるお寺のため、人の声が寺の境内の木々に吸い込まれながらも、かすかに聞こえてくる。しかし、そのかすかな声が一層座場の広さと静寂を感じさせてくれる。その静寂の中での「諸行無情の響きあり」の説教は、その日の私の心には特別響いた。

 その日の朝、建設会社を経営するS社長より、私が新潟でSMIビジネスをはじめた頃、大変お世話になったN社長が亡くなったという知らせをもらった。享年65歳だった。「明日がお通夜で明後日が本葬です・・・」ということも重なって一層「諸行無常」が心に響いた。 

 その講話を聴きながら芭蕉が使っていた『不易流行』という言葉を思い出していた。俳聖芭蕉は『不易流行』という言葉を、その諸行無常と同じように使っていたのだろうか、等と考えていた。。

 辞書には『不易流行; 俳諧の特質は新しみにあり、その新しみを求めて変化を重ねていく。「流行(変化)」性こそ「不易(変わらない)」の本質である』と載っている。私はこの言葉が好きだ。原理・原則という普遍性の「不易」を心の支柱とし、そして、あらゆるものが変化するという「流行」に対応し、人生を創っていく。そうした生き方が、人生の真の成功に繋がると思うからだ。

 お世話になったNさんのお通夜と葬儀は、新潟市内の式場で行われた。Nさんの親分肌のお人柄もあり、500名収容の会場が、溢れんばかりの参列者で一杯だった。また、享年65歳で現役であったこともあり、多くの方が涙され、祈っておられた。

 式の最中、上記の二つの言葉が私の心を何度もよぎった。そしてこれが現実であり、こうしたことが、人生の真理だと受け止めることができた。この三日間は悲しくもあったが、人生(人の死)と向き合うということにおいては、感謝の三日間でもあった。

 SMIのいくつかのプログラムに「この世で変わらないものは、あらゆるものが変化する、という事実だけである」とある。目標、モティベーション、そして成功も、『変化』がキーワードだ。このSMIという普遍の真理を柱にして、いつまでも変化し、成長し続けて行きたいものである。
(12.6.24) 



《平成24年5月》

『善行切符』  

 人は期待された通りに振る舞おうとする習性を持っている。
会社も社長が社員に対して抱く期待によって変わっていく。「うちは皆よい社員が集まっている。だから、社員を信じ仕事は皆社員に任せているんです。」と言っていると、社員はそのように振る舞い、セルフ・モティベーションで、自主性と責任感を持った社員に育っていく。しかし、逆も真なりで「うちの会社にはろくな人間がいない。だから、とっても仕事は任されない。」等と言っていると、その会社の社員もその社長の言っている通りに振る舞うようになり、考えることをやめ、自主性のない社員になっていく。

 カナダのリッチモンド市の警察幹部ワード・クラップ氏は『善行切符』という制度を導入し、劇的に犯罪件数を減らした。リッチモンドはその頃、中国系の移民が多く犯罪の増加が問題になっていた。そこで、ワード・クラップ氏はその制度を導入したのだ。それは、警察官が良いことをした人を表彰する『切符』を発行するという制度だ。そして、この制度を導入後、リッチモンドの犯罪件数が5割以上減り、再犯率が5%未満になった。通常の再犯率は55%だということから劇的な効果があったことがわかる。

 そこで、この『善行切符』と同じ考えで成功している私のクライアントを紹介しようと思う。その方は十日町市でコンビニを5店経営しているM社長だ。M社長は正にこの『善行切符』と同じ考えを会社に導入し、成果を上げている。

 過日昼食を共にした時こんな話をされていた。「一昨年の秋より、私はダメ出しは一切やめたんです。いつも店の店員の良いところだけを観て評価することに徹したんです。そうしたら昨年、全店舗が目標達成し、全体で対前年比115%を記録したんです」と仰られた。  

「それまでは、あの商品の並べ方はダメだ、あそこが汚れている、のダメ出しばっかりで、社員も私も疲れ切った状態だったんです。それでも事態はいっこうに改善されませんでした。しかし、人を評価するという、社員とのコミュニケーションのとり方でうちは一変しました。皆が自主性とアイデアを発揮するようになり、全てを店長に任せられるようになりました。

 そうしたら、どんどん実績が伸びてきました。本当にSMIの言う通り、社員の力を信じて接すれば、人間は誰でも素晴らしい力を発揮してくるんですね。」と言われ、「20年前に小杉さんと出会い、朝のミーティングを通してSMIを学べたことを今でも感謝しています」と仰って下さった。

 DPMプログラムのレッスン16にも『積極的期待を持って生きるとき、人は人々の動機を疑ったりせず、自分に対する人々の潜在的に持っている善意を感じるようになる』とある。人は、自分を信じ、真に積極的に生きようとするとき、周りの人の善意をも引き出すことになる。『善行切符』とM社長の話は、正にその良い例と言える。
(12.5.1)


《24年4月》

『ロール・モデル』を持つ

 私が最近成功の条件として感じていることがある。それは、成功する人は「あの人のように成りたい」という尊敬する人、目指す人を明確にしていることが多いということだ。

 これは一般的にはロールモデルと言われている。SMIプログラムでも人間は明確、不明確の差はあるにしても、誰もが、@現在の自分Aこう観られたい自分、そしてB自分が成りたいと思う三人の自分を生きていることを指摘している。そして潜在能力発揮する上で成りたい自分をイメージ(ロールモデル)し、実践することが、潜在能力発揮の鍵となることを説いている。

 イチローは中学、高校時代は田尾安志をロールモデルとして練習したという。陸上のカール・ルイスは、45分間で五つの世界記録を打ち立てたベルリンオリンピックの金メダリスト、ジェシーオーエンスをロールモデルとしていたという。

 今お邪魔している、自動車関連会社のI社長は京セラの稲盛社長の熱心な信奉者だ。I氏の社長室には稲盛さんの言葉や、写真がたくさん貼ってある。そして社員の会話の中にも、稲盛さんの言葉をよく耳にする。この会社は、今、県NO1の実績を上げている。そして日本一を目指し、全社員一丸となって頑張っておられる。

 私は、このSMI雑感で何度も紹介したように、第五代経団連会長の故土光敏夫氏を敬愛している。月に何度か土光さんの本に触れ、自分を振り返る。また毎日の手帳とメモ用紙に土光氏の写真を貼って、時々はそれを見ては自分を戒めている。

 当然これは、経営者としても尊敬しているが、人間としてそのように生きたい、そのようにありたいというイメージを作るためでもある。

 過日新潟県板金工業組合で、5回シリーズのセミナーに呼ばれた。そこでもこのロール・モデルの話を何度かしたら、何人かの方が「私はオヤジ(社長)を一番尊敬しています。いつも社長のようになりたいと思い仕事をやっています」と言われた。その一言でその会社が上手くいっていることを感じとることができる。それは、生きる意欲、働く意欲の土台となる「信じる」「信頼」がそこにあるからだ。その尊敬する対象成りたい対象が、つまり「ロールモデル」が働く会社の社長ということはなんと幸せなことだろう。

 これは個人生活においては親を尊敬するということだ。これも潜在能力を発揮することと深く関係してくる。なぜなら、そうした心構えが自己肯定感や自己確信を育み、健全なセルフイメージを構築するからだ。そして、そうした親を尊敬するということを土台にした健全なセルフイメージを持つ人は、人生に挑戦し、どんな壁をも乗り越えるという、強い心を発揮するようになることが多いものだ。
(12.4.1)



《24年3月》

「日本一になる監督は・・・」

 先日、新発田商業高校のS先生(バレーボール部監督、SMIクライアント)にお会いし、バレーボールで高校日本一になったリーダーの話を聞かせて頂いた。
 
 「過日、全国優勝の経験をもつ四人の監督さんと一緒に練習する機会があったんです。日本一になった人達は、絶対にマイナスの言葉を使わないんですね。どんなことも全部プラスにとるんです。練習の時は厳しい言葉が飛んでも、終わった後は、あそこが良かったね、あのプレーは素晴らしかった、上手くいかなかったあの点は明日こうやってみよう、という調子なんです。『駄目出し』なんかする人はいませんでした」また「トップに立つ人は、どんな人も受け入れる人達なんです。貴重な経験や、普通の監督なら自分だけのものにしておこうと思うような情報も、隠すことなく惜しみなく伝えてくれるんです。本当に勉強になりました。日本一になる人と、平均的な成績で終わる人の差をかいま見た思いがしました。」と仰られた。

 その話を聞いていて、SMIの100万ドルの成功計画(成功の五原則』)の四原則の『自信』の説明文を思い出していた。『挫折感を、はねとばしながら、あらゆる行動を起こして下さい。欠点に関わることなしに、長所に没頭し、弱点に関わることなしに、能力に集中することです。』とある。トップになる人は、それを忠実に実行している。

 またトップに立つ人達は、例外なくSMIで提唱するパーソナル・モティベーションの人達だ。それは生まれつきその人達に特別に備わっているものではなく、それを次のような実践を続けることで培ってきたのだ。『成功者は今の生活や自分自身に建設的な不満を抱き、その生活や自分自身をより良いものに変えていこうと努力し続けます。成功者は不平を言いません。彼らは事態を改善します。成功者は嘆きません。彼らは行動します。成功者は悲しんでばかりいません。彼らは他の人をリードします。これがパーソナル・モティベーションです。』(DPM レッスン2)当たり前のことではあるが、正にこれが真の成功者の大きな特徴でもある。

 3月11日、あの未曾有の大震災から一年。あの巨大な津波を見ながら、行き過ぎた文明に対する警告としてサムシンググレイトの存在を感じぜずにはおられなかった。それと同時に打ちのめされた状況にあっても、雄々しく立ち上がり、歩き出す人達の姿を見させて頂き、あらためて人間の可能性も感じさせてもらった。

 そうしたなか、私自身の価値観も変化した。私もあらゆることを良き方へ向けていくために、建設的不満を自分自身に持ち続けていこうと決めた。また、あらためて、どんな時も不平を言わずに事態を改善し、嘆く前に行動し、悲しむことなく人をリードしていくという、パーソナルモティベーションを実践することをコミットメントした。それを継続し、それが私の心構えとなったとき、私の精神面の目標である『清々しく、潔いリーダーとなる』も、達成できると確信している。
(12.3.1)


《24年2月》

「石も生きている」


 我が家の居間の壁に、SMIクライアントから頂いた日めくりカレンダーがある。
 その9日目に「石も生きている−石は生物ではない。代謝や生殖の機能はない。けれども石にも「働き」がある。ちゃんと保って、そこにある。「働き」があるから生きている。一個の石の中に、万物の「命」が見えてくる。」とある。

 私も、最近、無機質なものであっても、生物のようであり、心があるのではないかと思うことがよくある。

 昨年の、SMI雑感で紹介した天明先生が、ある紙器メーカーの再建をたのまれたときの話をされていた。 その会社の工場に先生は入ってみて驚いた。あまりに工場が散らかり、機械が汚れていたからだ。早速先生は工場を整理させ、機械を磨き上げさせた。そして社員に、毎日機械に向かって「今日一日、宜しくお願いいたします。」といって、きちんと礼をしてから仕事を始めるようにと指導された。そしてその会社は半年後に立ち直ったという。

 また、先生は自家用車の話をされていた。毎回、運転する前に必ず車に対して「宜しくお願いいたします」と言うことだった。平成3年に買った車は20年経つ今も全く故障もせず、元気に活躍しているということだ。(※車も家族の一員ということで「セブンちゃん」というニックネームがあると仰っていた)

 私は以前スズキに務めていて車の営業をやっていた。その営業の時、よく下取りをとり、その車を預かってくるときに驚いたことがあった。それは同じ型で同じ年式で、走行距離もそれほど違わないのに、どうしてこうも一台一台全く違ったものになってしまうのだろうということだった。

 それは、一人ひとりがその人の生き方、心構えで車を扱い、運転するからである。正にその人の生き方、心構えが車を作りあげているのだと感じたものだ。その結果、よく走る車、走らない車、故障する車、故障しない車となっていくのだ。

 私も今は、車を運転する前には必ず車に向かって「今日は○○まで行くよ、今日もたのむね」と声かけをしてから走り出す。そして仕事を終え帰宅し車庫に入れて、車に向かって「ご苦労さん」と言って、『ポン』とボンネットに軽く触れて一日が終わる。

 そのお陰か、昨年の9月まで乗っていた車は、11年で32万キロ走ったが一度も故障せず、電球の球を2,3回交換したのみだった。また燃費も2000ccクラスなのに、遠乗りでは、リッター18kmから20kmをよく記録したものだ。

 そんなことから『石も生きている』ではないが、車も機械も、生きているのではないかと感じている。
(12.2.1) 


《24年1月》

決心すると『昇龍』が動きだす

 新年明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。

 私は以前潜在能力というものは、努力した人のところで発揮されるものと思っていました。しかし、このビジネスを通じ、多くのSMIクライアントとのお付き合いさせて頂き、潜在能力は行動や、努力した人のところで働くのではなく、決心、決意した人のところで働くのだということが分かってきた。
 
 私がその例えとしてよくお話しするのが『AとBどちらがハワイへ行く確率が高くなるか?』という話です。「お金ができたなら家族でハワイへ行きます。」と言うAさんと、「お金はないのですが来年の5月に家族でハワイに行くと決めています」というBさんではどちらがハワイに行く確率が高いでしょうか、という質問だ。
 この質問をするとほとんどの方が「Bさんです」と答える。そしてこれは昔の人も言ったように「決心は九分の成就」で、Bさんの方が高い確率でハワイに行くこととなる。 

 しかしこの例で納得できた人も、いざ自分のこととなると、状況がととのったら決めますというAさんタイプになってしまうことが多いようだ。
「状況が良くなったら決断する、などと考えていると、あなたは必然的に失敗します。価値ある達成は、いくつもの障害を克服した結果、得られるものなのです。」(DPMレッスン2)

 11年前にSMIとの出会いで、そのAタイプの考え方をBタイプにかえて、大きく人生を変えた経営者がおられます。その方もSMIを知る以前は、過去のデータを元に「業界の全体の数字がこのように減少してきて、うちの会社も売上げが減少し利益が出なくなってきた、だからうちも数年後には必ず行き詰まってしまうだろう」と嘆いておられました。そんな時にこのSMIの考え方を知ったのです。そしてその時よりその方は、AさんタイプからBさんタイプに心構えを変えるべく、社員と共にSMIの学びをあらゆる場で積み重ねていきました。そしてその努力が実り、1年後より成果として現れ始め、とうとうその会社が今年の4月決算で12%以上の経常利益を上げるまで成長された。

 その社長は言われる、「この数字は業界の環境や過去の我が社の実績より決めたのではなく、2008年だから8%、2010年だから10%、そして2012年には12%をと決めたものなのです。しかし不思議なんですが、その成果を信じ、行動計画を書き、皆といつもその数字をイメージしていると、その方法が見つかったり、思いがけない大きな仕事が舞い込んだりで、必ず達成できるのです」と。

 結局、潜在能力は論理や、努力の上で発揮されるものでなく、決心、決意した人のところで発揮される。

 新しい年が始まった。今年は昇竜の年だ。昨年来日し、話題を呼んだブータンのワンチェク国王は、東日本大震災の被災地を訪ね子供達に言った。「誰の心の中にも龍(潜在能力)が住でいるのです。その龍(潜在能力)を育てていきましょう」と。 SMIはその龍を目覚めさせ育む。そしてあなたが、今年の夢を決心し決意し、はっきりとイメージできたたなら、その龍(潜在能力)がそれを必ず実現させてくれる。
(12.1.1)


《23年12月》


『天明茂先生』の講演会

  先月の29日に、阿賀野市主催で、新潟SMIクラブで5年前にお呼びし、好評を頂いた宮城大学の名誉教授でSMIクライアントの天明茂先生の講演会があった。天明先生は一貫して人間の本質と真理を語り続けておられる方だ。

 今回の講演会も、当社の古くからのクライアントである阿賀グローバルの加藤社長の、市への働きかけで実現した。加藤社長はいつも地域の発展に心を砕いておられる。その姿勢に私もいつも学ばせて頂く。

 当日は多くのSMIメンバーも会場にきていた。私は妻と二人で参加させてもらい、貴重な学びの時間を頂いた。そうした多くの学びの中で、わたしが心に残ったことを2、3お伝えしたい。

 先生ははじめに、『垂示思想』という考え方を紹介し、3.11の大震災で生き残った人達、またそうした同胞を見ている我々にサムシング・グレート(天、神、大自然、etc)が何を伝えようとしているかを、考えることが重要だと話された。千年に一度という大自然の事象に遭遇した人間として、何かを学ばなかったとしたら、それは、生きる使命、責任を放棄していることとなる。

 天明先生は現代人の問題の本質を、三つの誤解が生みだしたと指摘した。(1)自然は無限であるという誤解。(2)モノの豊かさが幸せをつくるという誤解。(3)人間が生物種の中で最も偉いという誤解。これらの誤解は人間も種の一つであり、大自然が創り上げたものだ。だから全ての『命』と繋がっていることを忘れた結果生じたものだ。

 集まった参加者への実践課題として、挨拶と掃除を徹底することの重要性を、先生ご自身の経験から話された。数百社の再建に関わってきて分かったことは、業績が悪化する企業の共通点は当たり前のことが、ほとんどできていないということだった。そのため先生は、当たり前の最も基本となる挨拶、掃除を徹底することをきっかけとして、多くの会社の再建を成功させてきた。

 会場で阿賀野市市長も含め、参加者全員で、挨拶の練習をした。天明先生のお人柄、人格もあってか、「おはようございます」「ありがとうございました」「宜しくお願いいたします」と45度の礼をしながら、気持ちよく声を出すことができた。となりの妻も体験型の講演会を嫌うタイプなのだが、喜々として声を出していた。

 司会者も講演会前にはきつい、難しい顔をしていたが、講演会終了時には笑顔で「皆さん、素晴らしい講演を頂いた天明先生に『ありがとうございました』と45度の礼をして終わりましょう」というかけ声で、全員が起立し、見事な参加者全員の「ありがとうございました」という礼で講演会は終了した。

 『真理は人を自由にする』という。正にそんな気持ちにさせてくれる爽やかな講演会だった。天明先生、素晴らしい学び、ありがとうございました。
(11.12.1)



《23年11月》

『4分の壁』という制限

過日、ある経営者の紹介で建設関係の経営者にお会いした。しかし、その方の心の壁の厚さに驚かされた。「イヤそういっても我々の業界では難しいんです。」ということを何度も繰り返されていた。それを聞きながら『四分の壁』の話を思い出していた。

人生は負の条件付け(思いこみ)との戦いでもある。SMIプログラムには、その克服法が具体的に明記されている。また『あなたの心の制限以外に、この宇宙にはあなたの潜在能力の発揮を制限するものは存在しない』とある。

 その心の制限を取り去ったときに、人はどうなるかを端的に物語る話が、アメリカの陸上競技の世界で『4分の壁』という話で語り継がれている。

 今より60年程前には、アメリカの陸上競技において、学者や専門家の間では、1マイル(1609m)を4分切ることは人間には不可能ということが常識となっていた。この記録を超えることはエベレスト登頂、南極大陸到達よりも難しいこととされ、この『4分の壁』のこと『brick wall(れんがの壁)』 とも言っていた。そのため、有力な選手も挑戦しては、いつも4分手前の記録で皆はね返されていた。

 しかし、1954年(57年前)にロジャー・バニスターが、3分59秒4という記録で、それを初めて破った。すると7週間後にはジョン・ランディが3分58秒フラットという記録を打ち立てる。その後15年間で、あれよあれよという間に、100人の選手が260回も4分の壁を破ってしまったのだ。そして、今では、1マイル4分の記録は高校生の記録となってしまい。この4分という記録では、高校生の大会でさえ入賞もできなくなってしまった。

 この事例は、いかに我々が専門家、科学者といった権威ある人達によって条件付けられ、制限されているかという話でもある。つまり、潜在能力の世界は全く科学とは関係ないのだ。潜在能力の発揮は、そうした論理や科学の世界とではなく、その人の「心構え」や「目標」と強く関係している。

 こうしたことはビジネスの世界でも同じだ。「そんなことは無理だよ」「それが業界の常識だよ」等という言葉に囚われているということは、正に前記の『4分の壁』と同じ壁にぶつかっているのだ。その条件付けを取り去ったときに、人は、またその会社は、無限に持っている潜在能力を発揮することになる。

 LED、痛くない注射針、アイホン、小惑星より帰還した隼、等々といった最先端の技術全てが、そうした負の条件付けを取り去って、豊にある潜在能力を信じ、それを発揮した人間によって、創られたのだ。
(11.11.)



《23年10月》


『上手な断り方』で自尊心を保つ

 老子の言葉に「本を読んで全てのことを鵜呑みにして信じてしまうのであれば読書などやらない方が良い」と言うのがあったと思う。また、私の尊敬する土光敏夫さんは読書について「私は本を読むときほ、人と付き合うのと同じように、いつも間答をしながら読む。ちゃんとしたひとの書いた本でも、全部が全部、正しいとは限らない・・・」と言い、読書とは著者との静かな対話であると言っている。

 これは講演等でも同じことだ、どんなに著名人であろうが、どんなに誠実で正しい人であろうが、その人が言っていることが、全て正しいとは言えないものである。

 先日あるSMIミーティングで、今人気の若手経営者の講演を聴いた出席者が「F.Nサンの講演で『たのまれ事はためされ事』と聞いてきたので、言われたことは何でもすぐに挑戦します」と言った。私はその言葉に対し「それは違いますよ。その言葉はとても歯切れが良く素敵な言葉ですがSMIイズムとは全く違います。その考え方は特定の団体、例えば師弟関係においての教育とか、職人さんの育成といったときにはとても役立ちますが、一般の組織や会社の活動の中では当てはまりせんので、もう一度よく考えてから実践して下さい」と申し上げた。

 一般の活動においては『たのまれ事はためされ事』は当てはまらないケースが多い。この言葉をそのまま経済活動において使ったら、その会社はすぐにおかしくなってしまうだろう。

 DPMプログラムのレッスンに『新しい仕事、あたららしい計画、人の頼みなどは、あなたの(価値観に則った)優先順位に従って判断して下さい。あなたの時間を求めている人は、結局のところあなたの人生の一部を要求しているのです』とある。SMIでは自分の人生を正しく生きると意味に於いて、自分自身の価値観、会社・組織の理念に則った優先順位に沿って、実践することを重要視する。だからSMIでは価値観と優先順位を守るための『上手な断り方』を勧める。この上手な断り方をやるためには、相手にきちんと敬意をはらい、相手の立場を尊重しながら断ることはもちろんだ。

 私は、この上手な断り方をできず、あっちの役、こっちの役にとまつりあげられて、自分を見失っているを経営者をたくさん見てきた。逆に自己の価値観を貫き、このSMIの上手な断り方で自分にとって本当に大切なもの、また自分にとって正しいものにエネルギーを使って、大きな成果を上げている経営者も見させて頂いた。だから『上手に断る』という生き方は、自分の人生を正しく生きるために、絶対に欠かせないことなのだ。また情報過多の多様化の社会にあって、上手に断ることは、自分の価値観を守ったことで自尊心を保ち、かえって人からの評価を受けることも多いものだ。

 私もSMIを知る前は、著名人、権威ある人の本を鵜呑みにし、自分の考えが定まらず、事ある毎に右往左往していたものだ。しかし今は、SMIイズムという真理に照らし合わせて、本を読み、講演等も聞けるようになった、お陰でどの様な考え方に触れてもいつも心が自由だ。また時々は『上手な断り方』で自分の時間を創り出し人生を楽しんでいる。そうした時、あらためてSMIプログラムとの出会いに感謝の気持ちが湧いてくる。
(11.10)



《23年9月》

「私は失敗したことはない」エジソン

 先日ある会社のSMI社内塾で、ベテランの社員より「成功者は失意落胆は決してしないということですよね」という質問をされた。私は「それは違います。成功者も失意落胆します。プログラムにも、楽聖といわれたベートーベンやノーベル文学賞と取ったジョン・スタインベックが、難聴や評論家の酷評によって自殺を考えた話が出てきます。かえって成功者といわれる人の方が、失意落胆の経験をしているのではないでしょうか」と答えた。

 その後次のような話をお伝えした。

 成功する人は、失敗したり、事がうまく運ばなかった時には、当然失意落胆することもある。しかしその後のとらえ方(心構え)が素晴らしいのだ。端的に言うと、その結果を失敗と捉えず、成功へのプロセスと捉えるのだ。

 その例としてエジソンのフィラメントの話が有名だ。
エジソンがフィラメントの素材の実験(数千回の実験)を繰り返している時。友人や記者が質問した「こんなに失敗して、あなたは実験をよく続けられますね」と。エジソンは答えた「私は実験に失敗したことはありませんよ、フィラメントに適さない素材を発見し続けているのです。」と言ったといわれている。積極的・肯定的な人生に『失敗』はないのだ。

 プログラムにも次の言葉が何度も出てくる。
 
 成功も失敗も心の状態なのです。

 過日、民主党の総裁選の演説で、野田総理が書家の相田みつを氏の『どじょうが・・・』という話をして話題になった。この相田さんの珠玉の言葉の数々には、この成功や失敗のとらえ方を間違えて苦しんでいる現代人を啓蒙し、勇気づけるものがたくさんある。

  涙にこらえて
  悲しみに耐える時
  ぐちを言わずに
  苦しみに耐える時
  いいわけをしないで
  黙って批判に耐えるとき
  怒りをおさえて
  屈辱に耐えるとき
  あなたの
  目の色が深くなり
  命の根が深くなる


 生きる上で問題が起きたり、失敗したりするのは当然だ。起きたことをどう受けとめるか(心構え)が全てを決めるのだ。またブッシュ孝子さんという人の詞はもっとそのことを端的に語る

  過ちは誰でもある
  強い人も
  弱い人も
  偉い人も
  愚かな人も
  あやまちは人間を決めない
  あやまちの後が
  人間を決める


 ポールj・マイヤー(SMI創立者)も言う
 「心構え(受けとめ方)こそがすべてだ」と。(11.9.1)



《23年8月》


この秋は、雨か嵐か知らねども・・・

 農業は、自然との共存であり、戦いでもある。

 また新潟と福島を、七年前の7・13水害に匹敵する豪雨が襲った。私のお付き合いさせて頂いている多くの農業法人も、大きな被害を受けた。冠水した田畑を見ると思い出す道歌がある。

  
 この秋は 雨か嵐か知らねども
          今日の努めの田草を取るなり
 

「農家は秋の実りを信じている。しかし嵐や、雨によって実らないことがあることも知っている。そしてそのことに対する不安がいつもある。しかし、農家としてのつとめ、人間としてのつとめとして、今日のやるべきこと、今やるべき田の草取りに専念するのだ。」ということだろう。

これを精神的にとらえるなら、「農家が平常心で生活するには、この秋は収穫できるかどうかと、思い煩わないためには、今日、今やるべきことに集中することが大切だ。そうした姿勢が将来にたいする不安を払拭する。」。またそれを教条的にとらえれば、「人生は刹那、刹那の積み重ねだ、生きるとは本来今に生きることだけだ。だから今日に集中し、あなたは今やるべき事を全力でやり抜きなさい」となるのだろうか。

しかし冠水した田畑を目前にして、そうした心構えになるのは難しい。とすればこのSMI雑感で何度も紹介している『ネガティブケイパビリティー(負の能力)』が、誰にでもあることを、あらためて考えて頂きたいと思う。

こうした時こそ、人がマイナスの状況に遭遇した時に発揮される、恐ろしいほどの強大なパワー(潜在能力)を、誰もが持っていることを先ず信じることだ。そして、その強大な潜在能力を活用するために、遠い理想を思いだし、未来に希望を持ち、今日やるべき事に全力でのぞむことだ。そうした時にはじめて道は開けていく。(※22,2月「問題や失敗に感謝する」)

私は今、経営に関して、法政大学の坂本先生にたくさんのことを学ばせて頂いている。(※先生の指導はSMIのカンパニープログラムと重なる点が多い、また先生の本には多くのSMIユーザーが登場する)

最近の先生の本『経営者の手帳』に「我が国の未来を決するのは工業ではなく、農業である・・・・・我が国の未来を担う産業は、数年前まで衰退の一途をたどった農業だ。・・・食糧危機も迫っている。自給率を高め、食の安全を守る一方で、農業を国の産業の柱としていけるかどうかで、この国の将来が決まってくる。」書いている。

今後の日本の経済や社会を担う産業として、農業はもっともっと注目されていく。農業の未来は明るい。私は震災や水害等の被害を見るにつけ、その思いを益々強くしている。

ガンバレ!日本農業!(11.8.1)



《23年7月》


練習はキャプテンの胴上げから!?


 
 先月の6日の早朝、新発田商業高校のS先生(同校女子バレーボール部監督)よりメールを頂いた「昨日の大会で優勝し、インターハイ出場が決まりました。・・・・・全国大会に向けSMIをより一層活用していきます」とあった。

 私も同部の選手にメンタル面の話をさせて頂いたことがあった。また先生が忙しい中にあっても、夜のSMIの勉強会に出席したり、異業種のリーダーとの交流会に出席したりと、常に謙虚にSMIプログラムを学び、努力される姿を見させて頂いていただけに、本当にうれしかった。

 早速、新潟日報の朝刊のスポーツ欄をみた。「新発田商業4年ぶり頂点!」という見出しで記事になっていた。その記事から、チームで素晴らしいビジュアリゼーションをやっていたことを知った。そのビジュアリゼーションこそが勝利を確実なものにしたと確信した。

 記事には「153センチの小柄な体が高々と舞った。バレーボール女子決勝は、新発田商が新潟中央を下し、4年ぶりの頂点に立った。試合後キャプテンでリベロの近美咲を胴上げして、喜びを表した。1月の1,2年大会の準々決勝で新潟中央に敗れてから、全国大会を意識した練習方法に変えた。練習の始まりは近の胴上げから。県大会優勝はあくまでも通過点であることを、意識するためだ、『毎日してもらっているが今日の胴上げはとても高く、気持ちも高かった』と近は笑った。」とあった。

 そうしたビジュアリゼーションの記事を読んで、高校女子バレーで全国制覇を10回成し遂げた、古川商業高校の元女子バレー部監督の國分先生のことを思い出した。國分先生は県大会で優勝し、初めて全国大会に行った時、全く無名の高校だったが、選手に『表彰式の時に、ああやっぱりあの高校は田舎の高校だなと笑われないように、表彰式の練習をしておこうや』と言って皆で何度も表彰式の練習をしていたという。これは当然、選手達が表彰台に立つことをイメージさせるために國分先生がやったことだろう。そして全く無名で、NOマークの古川商業が初優勝する。

 
このようにSMIイズムを、素直に実践される二人の監督のことを考えながら、トップで勝つためのビジュアリゼーションは十分条件ではないとしても、勝利を確実にするための必要条件なのだなとあらためて感じた。

 このようにトップに立つ人達ほど、SMIの手法を素直に取り入れていかれる。上手くいかない人は、こうしたビジュアリゼーションの手法は知っていても、絶対に実践しない。何故ならそれは自分自身の潜在能力も、選手の潜在能力も本当は信じていないからと思う。

そうした点で、今回の優勝は、S先生の思いの強さと、先生が生徒達の潜在能力を信じ切ったゆえの勝利だったと、私は確信している。

ガンバレ!新発田商業高校女子バレーバール部!(11.7.3



《23年6月》

日本人の幸福度は?

 先日、OECD(経済協力開発機構)より各国の国民の幸福度調査の結果が報告された。11項目の中で日本人は、「安全」「教育」では高い反面、「健康」や「幸福度」では世界で最も低い水準にあることが明確になった。

 この数字を見ながら、SMIプログラムで提案している成功の原則(幸福の定義)を日本人の多くに知ってもらい、自らに真の成功とは、本当の幸せとはと、問いかけする人が増えたなら、この数字は大きく変わると思った。そこで今月はSMIの成功の原則をご紹介します。

《第一原則》 人との比較では真の成功は絶対ない
 多くの日本人は比較によって、自分の幸福度を見ようとする。私の方があの人より大きい家に住んでいる、うちの子の方が良い大学に入った、等と言って本来の価値と関係ないことに振り回され、右往左往している。比較は今自分がどこに立っているかを明確にすることには役立つが、それが絶対の価値ではない。比較で自分を見ることの愚かさを書家の相田みつをさんがトマトとメロンという詩に書いている。

【トマトとメロン】
トマトにねえ いくら肥料やったてさ メロンにはならねんだなあ
トマトとね メロンをね いくら比べたって しょうがねんだなあトマトより メロンの方が高級だなんて思っているのは 人間だけだね  それもね 欲のふかい人間だけだな トマトもね メロンもね 当事者同士は 比べも競争もしてねんだな  
トマトはトマトのいのちを精一杯生きているだけ 
メロンはメロンのいのちを いのちいっぱいに 生きているだけ
トマトもメロンも それぞれに 自分のいのちを 百点満点に生きているんだよ

トマトとメロンをね 二つ並べて比べたり
競争させたりしているのは そろばん片手の人間だけ 
当事者にしてみれば いいめいわくのこと
メロンになれ メロンになれ カッコいいメロンになれ!! 
金のいっぱいできるメロンになれ!! と尻をひっぱたかれて 
ノイローゼになったり  やけのやんぱちで 
暴れたりしているトマトが いっぱいいるんじゃないかな(相田みつを)

《第二原則》 成功は結果だけではなく、むしろプロセスにこそにある
 以前甲子園に出場した選手の話を聞いたことがある。その人は中学より野球部に入って甲子園を目指していた。中学、高校とどんなつらい練習も甲子園の土を踏むことを考えると続けられたという。ところが県大会で優勝し、甲子園出場が決まったときには、喜びよりも恐怖心と一種の虚脱感を感じ「こんなもんか」、と思った、と話しておられた。その人は結果よりも目標を目指している時にこそ幸福を感じていたのだ。
 また、多くの人の生き方の手本となっておられる聖路加病院の日野原重明先生も「達成しなくても良いから、夢や目標を持ち続けることこそが大切なのですよ」と仰っておられる。これも結果よりもプロセスにこそ価値があるということではないだろうか。

《第三原則》 成功はあなたが定義するもの
 成功はその人の価値観と深くつながっている。1,000人いれば1,000人の価値観、1万にいれば1万人の価値観がある。とすると極論すれば日本に1億3,000万人がいるのだから、1億3,000万の成功(幸福)の形があるとSMIでは考える。

 大震災後は日本人の価値観が大きく変わろうとしている。そうした自分の価値観を整理しようとする時、こうしたSMIの提唱する成功の原則は大いにお役立ていただけるものと思う。

 前出の相田みつを氏は言う
「この世はわたしがわたしになるところ、あなたがあなたになるところ」
人生は人が良いといった花を咲かせる場ではない。自分自身が信じ、愛した花を咲かせる場だ。その時にこそ人は真の幸福と生き甲斐を感じる。(11.6.1)



《23年5月》

ネガティブ・ケイパビリティー

 DYFプログラムを学んだ多くの人が「レッスン5のネガティブ・ケイパビリティーという考え方は素晴らしいですね」と言われる。ネガティブ・ケイパビリティーとは「負の能力」という意味で、私は「人間が障害や壁にぶつかった時に初めて引き出される最も強大な潜在能力」と、執っている。だからこのネガティブ・ケイパビリティーという強大な力は、障害にぶつかった時にしか発揮されず、それを避けて通る人には絶対に引きだされることのない潜在能力である。だから今回の震災も、正しい受けとめ方(あるがままに現実を直視し問題に面と向かう)をして、前向きに立ち向かう人にとっては、この強大な力が味方をしてくれる。だから私はそうした人によりこの震災の復興は予想よりずっと早くなされていくものと確信している。

 SMI創立者のポールJ・マイヤー自身はこのネガティブケイパビリティーを発揮するに当たって、障害や問題に対しての対処法を五つのステップで述べている。

@先ず問題が起きたことを感謝しよう

 多くの成功者はこの心構えで問題に立ち向かっているのです。先ず、問題が起こった結果、何か良いこと(成功の種)が生活の中に入ってくることを深く信じることが大切です。人が最上の解決を求めて、誰もが持っている豊かな創造性を用いれば、その問題が必ず善をもたらすことになるのです。

A問題がもたらしてくれる少なくとも五つの恩恵を記しておこう
 問題の解決のために、あなたが懸命に考え努力をするなら、全ての難局はその中にそれと同じぐらいの、あるいはそれ以上の恩恵の種を潜めていることが分かる。そしてそれを解決した時の恩恵を書き出そう。

B問題の解決のための行動計画を書こう
 次のステップは、問題解決のためにとることのできる行動のリストをつくることです。書くことが大切なのは、問題の本質をはっきりさせるためです。またそれが創造的なアイデアをとらえさせます。そしてそれが行動を起こすための自己誓約の意識を与える大きな力となります。

C全て可能なリストを書き出したら、その中から選択し実践しよう
 解決法のリストができても、行動を起こさなければ決して問題は解決しません。全ての可能な解決法を検討し、その中から、のぞまれる結果をもたらす可能性の最も高いと思われるものを選び、行動しよう。

D進行をチェックし、必要な修正をしよう
 問題解決における成功も、あらゆる成功と同じように、自動的に生まれるものではありません。もし最初の解決法が思ったような結果を生まなかったら、もう一度可能なリストを出してみよう。そこにもう一度可能性を加味し、再び前進しよう。時には、小さな修正で済むこともあるが、時にはアプローチ全体を変える必要に迫られる時もある。しかしここで大事なことは「この問題は私が解決できるから、与えられたのだ」ととらえ、どんな問題も必ず解決できるとアファームし続けることです。

 特に問題の対処法としては第1ステップが鍵を握るようだ。私はいまだに『問題に感謝』とまではいかない。しかし前向きにとらえるクセと第2ステップの解決した時の恩恵を五つ以上書き出すクセはついてきた。 「人生とは問題解決である」と言った人がいる。今回の大震災に遭遇し、正にその通りだなと思った。今直面している多くの問題を成長の場、潜在能力発揮の最高の場とするためにも、上記の『問題解決の5ステップ』を活用し、これらの問題を前向きに対処していきたいものである。 (11.5.3)


《平成23年4月》

最後は勇気

 3月11日マグニチュード9.0という巨大地震と大津波が東北と関東を襲った。車も、家も、そして人も、あっという間に流された。世界一の防波堤でさえ、大自然の巨大なパワーの前には、まるで子どものおもちゃのように粉々に壊れてしまった。そして、日本の原発は絶対安心と言われてきたが、津波を被った福島第1原発は、2週間近く経つ今も、全く予断を許さない状況が続いている。

 以前このSMI雑感(08年9月)で「潜在能力の世界においては、科学は参考程度に・・・」と書かせて頂いた。私がそこで言いたかったのは、一言で言うと「人間のおごりによって、科学や技術を絶対視しすると、人は物事の本質が見えなくなり、間違いを犯すと言うことだ」。確かに科学は人類にとって、とても重要なものだ。しかし、自然と科学の関係を考えた場合、科学が自然を超える、等と言うことは絶対に不可能だ。自然は昔の日本人が持っていた「畏れ」や「畏怖」を持って接すべきものであって、西洋的な『人が自然を統治する』という、人を自然の上におく間違った考えでは、必ず今回のような不都合を生みだし、多くの犠牲をつくることとなる。

 しかし、だからといって人間は決して小さな存在ではない。よく考えてみれば分かることだが、人間を創り、進化させてきたものは何か。それは自然の大いなる力そのものだ。だから私は最近SMIクライアントにセミナー等をつうじ「人間にとって最も身近な自然とは人間そのものですよ」「人の潜在能力とは、自然が我々人間を38億年(生命38億、人間500万年)かけ造りながら与えてくれた素晴らしい恩恵です。だからこそ潜在能力は、人が自然と調和した時に一番発揮できるようになっているのです」とお伝えしていた。

 今、瓦礫の山となった町を、復興させようと立ち上がった人達。その人達をサポートしようとするボランティアの人達。そして、原子力技術が初めて直面している原発事故の現場で命をかけ戦う人達。その人達は正に日本を救おうと、持てる力(潜在能力)の全てを発揮しようと奮闘しておられる。本当に頭が下がる思いだ。

 こうした窮地に接した時に思い出す詩がある。それは幼児向けのテレビアニメ忍たま乱太郎のテーマ曲が「勇気」を歌っている。とても励まされる詞だ。我が家の娘がよく口ずさんでいたので私も覚えてしまった。過日のテレビでも被災地の人を励まそうと、この詩を皆で歌っていた。

 SMIでは「人はお金がなくても生きられる。また健康がなくても生きていける。しかし勇気がないと生きられない」といい、最後は勇気だという。

 そしてその勇気は言葉から生まれる。人間は言葉の力て立ち上がる、言葉によって勇気づけられ生きていく。そしてお互いに、人間を信じ、大自然の大いなる力を信じ、生かし、生かされ、生きぬいていきたいものだ。 がんばれ日本!




《平成23年3月》


「空からお金が降ってくる」


 日本は政治の混乱と共に、多くの分野で閉塞感があり、不安から抜け出せないようだ。しかし、そうした中にあっても、ポールJ・マイヤーの「心構えこそがすべてだ」の言葉を信条とし、そうした不安を希望にし、挑戦しているSMIプログラムのユーザーが沢山おられる。

 私の出身地で、日本有数の豪雪地帯十日町市にも、多くのSMIクライアントがいる。先日、商店街で『まるこし』という金物屋を営む樋口専務にお会いした。樋口さんは20年前に5年間実施したSMI早朝ミーティングに一生懸命参加された方だ。

 「小杉さん、今年は正に”空からお金が降ってくる”の冬でした」と言われる。「どうしたんです?」と聞いたら「今年は全国的に各地で雪が降ったでしょう。それで除雪技術がないところからネットを通じ、除雪用具の注文が殺到したんです。十日町は除雪という点においては全国NO1の先進地だったなと改めて感じました」と言われる。「十日町に住む人もいろいろですが、だいたいは雪はいやなものと捉えています。しかし、雪を前向きに受けとめ克雪・利雪しようとしている人にとっては、雪を観て『空からお金が降ってくる』という言葉に象徴されるように、本当に天の恵みともなる、と改めて実感したんです」と言う。
 
 樋口さんの店は小さな金物屋だが市内では有名な金物屋だ。それは、「あそこに行けば、水回りのことや火の器具の用はほとんど解決するよ」と言われているからだ。従業員が以前「うちの店はホームセンターからの、お客さんの紹介が多いんです。ホームセンターは量は多くても限られた種類のものしか置かない。また古い物は置かないということで、お客さんの対応に困ったとき、うちの店へ行きなさいと、紹介してくれるようなのです。有り難いものです」と言っていた。

 樋口さんのところもご多分にもれず、商店街の衰退と共に,厳しい時があったと聞いていた。しかしそうした従業員の話からも分かるように、自分のところの強みと特徴をしっかり捉え、それを活かしていった結果、他にない店となり、業績を伸ばしている。

 そうしたクライアントの話を聞くにつけ、潜在能力を発揮していくなら、いくらでも繁栄する道はある、と改めて教えられた。

 十日町市は、全国で初めて雪祭りをやった町でもある。今年も2月18日、19日、20日の3日間開催され、6万人の町が30万人の人出でにぎわった。これも雪を前向きに、積極的に捉えた先人たちが残してくれた後世の人への大きなプレゼントである。
(11/3/3)



《平成23年2月》


 パーソナル・ミッションステートメント

 私は菅総理がよく使う「最少不幸社会」という言葉が嫌いだ。アファーメーションの原理からいえば、この「最少不幸」という言葉に心は引き寄せられ、かえって多くの人が不幸をイメージしてしまうからだ。
 それ以前に、いつも思うことは政治家は「幸せ」「不幸」という意味をきちんと理解し使っているかどうかだ。

 「幸福」ということはSMIプログラムのテーマである「成功」という言葉と同じで、多くの人がよく使っているが、まったく理解されていない言葉だ。幸福も成功も個人的な価値観と密接に繋がっているものであり、一括りできるような言葉ではない。

 私は社会の多くの問題はこの「幸せ」という言葉を深く考えずに短絡的に「お金があれば」「地位が高ければ」等を、幸せと思いこまされた結果、起きていることが多いと考えている。ちょっと考えれば分かることなのだが、そうした真実、真理を自分で考えることをやらないため、現代人は物理的には豊になったのに「幸せ」「成功」からかえって遠ざかっているように思える。

 SMIのDYFプログラムはパーソナル・ミッション・ステートメントで自分の働く使命・生きる使命を書くようになっている。これを書こうとすることによって、生きる意味・働く意味を考えるようになる。その考えることこそが大切であり、ミッション・ステートメントを作る目的だ。

 農業法人のSMI社内塾で、ある青年が「大学を出てきてオレは何故ここで農業をやっているのだろうか」と悶々と悩み、働く意欲をなくしていた。そうした時このパーソナル・ミッション・ステートメントを書いた。そして自分に問いかけた。考えて、考えて、考え抜いた。そして何故自分がここで農業をやっているかという結論を出した。それは「自分はこのふるさとのために生きたい」という「思い」だった。その後仕事に対する姿勢がまったく変わったという。

★私のパーソナル・ミッションステートメント
 『私の使命は、私の故郷に生まれたことに誇りを持ち、故郷の良さを人々に伝えることです。@故郷に残る人々には、故郷に誇りを持って住んでいける環境を与え A故郷を離れる人々には、誇りを持ち続けられる情報を提供し、また戻れる場所も残しておき B故郷を応援してくれる人々には故郷の資源を提供する。そして私はそのようなかたちで故郷に貢献した人間として,人々の記憶に残りたい。』

自分のミッションを明確にしていくことは、働く意欲、生きるモティベーションへと繋がる。
(11/2/1)



《平成23年1月》


笑いと感動でスイッチON!


新年明けましておめでとうございます。
 本年も宜しくお願い致します。

 人間の真の幸せには、四つの健康が必要と言われる。一つは身体の健康、二つ目は精神の健康、三つ目が人間関係の健康、四つ目は最近の日本人が忘れてしまった『魂の健康』だ。

 昔日本人は「魂の民族」と言われ、魂で物事を考える民族だった。多くの文明国にあって魂をこれほど尊んだ国はなかった。仕事も魂で働いた民族だ。魂で働くと言うことは、利害だけで判断したり動かないということであり、人のため、自己を高めるために働くということだ。

 そうした魂を尊ぶ精神が、「刀工」や「宮大工」また「華道」や「茶道」、そして医の「仁術」を生みだした。昔の医者の多くは利益よりも、人が喜ぶことにこそやり甲斐と、生き甲斐を見いだしていた。きちんとした医療制度がない時代にあって、多くの魂の「赤ひげ」達が庶民の健康を守り、人命を救っていたのだろう。

 命をかけた働きの象徴は、昔の築城士だ。技術も道具もなかった時代にあって、築城そのものが命がけであった。そして彼らは城を築くことで、城の秘密を知るものとして、命を奪われることを知りながら、その仕事に魂を傾け、命をかけ城を建て、そして完成と同時に切腹し、はてていった。

 この境地は人間との取引の中に於いてはとても昇華しきれるものでない。それは人智を超えたサムシング・グレートとの魂の取引に於いてこそ可能になることだ。(※サムシンググレートは元筑波大学教授の村上和夫氏が使った。村上氏は人とサムシング・グレートを繋ぐものが遺伝子と考えた。そして人間はその情報の3%しか使っていないと指摘している。)

 SMIプログラムでは50年前より人生の6分野(家庭面、精神面、健康面、経済面、社会面、教養面)の成功を提唱している。そしてその精神面での成功(生きがい)は、宗教的な観点(サムシング・グレート)から自己をみつめることをやらないと難しい、とSMI創立者のポール・Jマイヤーは指摘する。

 前出の村上元教授は遺伝子にもスイッチがあり、そのスイッチをONにするものは「笑い」と「感動」そして「目標を持って挑戦」することいっている。正に魂は笑いと感動、そして目標によって揺さぶられ、目を覚ます。私には未だ特定の宗教はない。しかし今年も座禅道場(新潟市龍雲寺)に参禅し、また、キリスト教の教会にも足を運び、学んでいきたいと考えている。そこにはいつも笑いと感動があるから。

 SMIの中心プログラムであるDPMプログラムの最後のレッスンに
 「あなたは人生の価値をどの様にはかるであろうか。富か、権力か、名声によってか。時があなたの行動を全て記録したところで、これらは全て色あせてしまう。子供達(人々)は、あなたがどんな人であったかを、どうやって思い出すだろうか。あなたが獲得したトロフィーや表彰状を思い出すのであろうか。否。子供達(人々)は、あなたがどう笑い、どう話し、どう愛したかを、思い出すのだ。それは、あなたの『魂の羊皮紙』に書くことなのだ。」とあります。

 今年はSMIプログラムの学びと共に、笑いと感動によって、あなたの心の中にある『魂の羊皮紙』に何を書くかを目標設定されたら如何だろうか、あなたの今年の魂の健康のために。
(11/1/1)


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